今週のどうする家康は、新しいキャラクターにテンションが上がったり、誰かが作戦を漏らしてしまわないか不安でいっぱいになったり、忍びが壊滅して絶望したりと感情がジェットコースターみたいに振り回されっぱなしの5話でした!
そんな中でも特に頭から離れなかったのが、瀬名奪還作戦が失敗に終わり、苦しむ瀬名を見た田鶴の表情…
なんでそんな「え…?」みたいな顔…
そりゃあこうなるよ…
もしかして想像していなかったのか?
と見終わった後もしばらくもやもやしていたのですが、兄とお話しているうちに「田鶴…お前…いいやつだったのか…」解釈ができましたので、ぜひ読んでいただけると嬉しいです!
NHKの公式youtubeで該当箇所を見れることができました!
<https://www.youtube.com/watch?v=D0dKX1gi-J4&t=10s>1分28秒ぐらいですー
(※こちらの記事は2023年2月5日放送の記憶を頼りに書いていますので、間違っている箇所があるかもしれません。またセリフはニュアンスで書いています。ご了承ください。)
なぜ田鶴は関口家をはめたのか
①純粋な善意でやってしまった
私が最初に考えていたのがこの解釈です。
田鶴は悪気なく、良かれと思って行動していたのではないか。
彼女はスパイを命じられていたわけではなく、例えば「関口家に何かあったら心配だから、報告してね」と言われて、純粋な相談相手として関口家を訪ねていただけだった説。
そう感じたのは、田鶴が最初に関口家を慰めにきたときに
「氏真様とわが兄、鵜殿長照がきっと松平をお討ちくださる。さすれば、関口家への仕打ちも終わりましょう」
と今川の人間であることを強調してお話していたからです。
もし私が瀬名の立場でこんなことを言われたら、「ひーこの人には胸の内を明かせん…」と思ってしまいます。
スパイなら
「松平殿はお優しいお方です。氏真様ともご兄弟のように育ってこられました。裏切りなど本心であろうはずがございません。きっと敵の懐に潜り込み、機を待っておられるのです。いずれは信長の首をもって駿府に戻ってまいりましょう。さすれば元康殿は、義元公の仇を打った英雄にござります。今は耐え、早く駿府に戻るよう元康様を説得することがお瀬名の努め。それが実るまでは、この田鶴が、関口の皆様を精一杯お支えします…」
などと、元康を心配したふりをし、もっと甘い言葉で信用を勝ち取ろうとすると思うのです。
でも田鶴はそうはしませんでした。
いい子で、心配だから顔を見に行っていて、そしたらある時急に巴から脱走計画を聞いたから、「あら!一大事!」と今川家に報告しただけ。
なので、「どうして田鶴は絶望し、悲痛な表情を浮かべる瀬名を見て、驚いたのか」の答えは、
「瀬名の顔を見て初めて、自分のやっていたことが、彼らのためになるものではなかったと気づいた」になります。
しかしこのルート、考え進めていくと、一つ想像が難しい場面が出てしまいました。
それは、巴は田鶴にどんな別れの挨拶をしたのか、という点です。
瀬名奪還作戦が失敗したときの巴の反応(「私はただ、田鶴殿には最後のご挨拶をしようと…」)から考えると、
たぶん「田鶴殿…私たち関口家は今晩ここを出ます。今までお世話になりました。」みたいな話をしていると思うのですが、
どの角度から見ても、善意の田鶴が「じゃあこっそり警備を増やして、関口家を手引きする奴らを皆殺しにしてあげなければ…!」と思いつくような内容ではありません。
百歩譲って、田鶴が「巴殿は、松平家に連れ出されるのが怖いんだわ」と考えたとしましょう。
しかしそれならその場で「田鶴にお任せください。兄にお願いして警備を増やして、関口家の皆様は、必ずお守りします」と不安を取り除こうとするはずです。
田鶴のセリフといい、巴がそれを言われた後の反応といい、そういったやり取りが事前にあったようには感じませんでした。
少し考えてはみましたが、結局
巴と田鶴の間にどんなやり取りがあれば「関口家への純粋な善意で」「こっそり兵を増やして」「密告された計画を阻止する」ような状況になるのか、ちょっと思いつくことができなかったんです。
そこで考えたのが次のような解釈です。
②役目を果たすのに夢中で、そこまで考えていなかった
氏真様の命で「関口家に探りを入れろ」と仕事を言い渡され、全うしてしまった。
この時代、女性が政治的な仕事を任されることは少なかったでしょうから、名誉な役目と舞い上がってしまい、力が入りすぎてしまったのかもしれません。
後のことまで想定して動く余裕がなく、目の前のことに一生懸命に働いて、瀬名の曇った表情を見て、初めて自分のしたことの大きさに気づく…
現代でも時々見かける悲しい出来事です。私もやっちゃう…
しかし、このルートで考えていくと、田鶴が巴に言った「よくぞ打ち明けてくれました」というセリフがひっかかりました。
関口家の監視を命じられていた田鶴が、狙い通りに心の隙をついて重要情報をゲット!
そして関口家を助けに来た人たちを皆殺しにして、絶望する瀬名たちの前で「よくぞ打ち明けてくれました!」なんて…
これはちょっと酷すぎではなかろうか…!
この状況で巴にお礼を言うのは、
「あなたがまんまとボロを出してくれたおかげで、私は役目を果たすことができたわ!ありがとう!」
というようなものです。
さすがに皮肉が効きすぎています!
私はこれから田鶴が登場するたびに、血の涙を浮かべながらテレビをにらみつけないといけなくなってしまう…
それは悲しすぎるし、田鶴はそんな人の心がわからない冷酷残酷人間じゃないと信じたい…
あれじゃないこれじゃないと考えて最後にたどり着いたのが、3つ目の解釈です。
③スパイの役割を果たすことが、同時に関口家を守ることになる、と信じていた
いったん落ち着いて、田鶴のセリフ
「氏真様と我が兄、鵜殿長照がきっと松平をお討ちくださる。さすれば、関口家への仕打ちも終わりましょう」
を素直に聞いてみることにしました。
これまで描かれていたように、駿府はきらびやかで豊かな大都市です。織田の奇襲に敗れたとはいえ、なおも三河など比べ物にならない国力を有しています。
今川はその駿府を統べる名家で、瀬名はその血を引くお姫様(wikiによると、巴が今川義元の妹という説がありました!)。元康の裏切りで今はこんなかわいそうな暮らしになっていますが、本来はそんな扱いをされる身分ではないのです。
だから、田鶴が「松平家はもうじき氏真様に討たれる。そうすれば、お瀬名を人質扱いする必要もなくなり、関口家に対する仕打ちも終わるはず」と信じていても不思議ではありません。
田鶴は「お瀬名の心の内は、田鶴には手に取るようにわかる」というほど、まるで姉妹のように仲良く育ちました。
心優しい瀬名が、夫のせいで大切な家臣が死に、また自分や家族の命も失いそうな危機に陥っても、それでも元康への情を捨てきれないことも予想していたはずです。
そんな彼女が、元康に頼まれたら…
そんな優しい彼女が付け込まれたら…
もしかしたら一時の気の迷いで、松平家に味方をしてしまうかもしれない。
いずれ今川が打ち倒し、制圧するはずの元康に。
そんなの瀬名の立場を危うくしてしまうだけなのに…
と田鶴は心から心配したでしょう。
だから彼女は「松平を打ち倒し」と今川側の言葉を瀬名に向かって伝えたのではないでしょうか。
あなたは今川側の人間である。
松平家は今川にいずれ打ち倒される運命であり、あなたはそちら側につくべきではない。
目を覚ますのです!
と暗に瀬名に訴えかけていたのかもしれません。
こう考えると、
「よくぞ打ち明けてくれました」
この言葉は、むしろ関口家を守るためのセリフに聞こえてきませんか!
巴の別れのあいさつで、田鶴は瀬名奪還作戦の計画を知ります。罪人のような扱いに耐えかねて、関口家が今川から逃げて徳川につこうとしている…!しかしそれは田鶴から見ると、無謀な現実逃避です。「はー溺れる者は藁をもつかむって本当なんだなぁ」と思ったことでしょう。
だって今川と徳川の決戦は近く、戦えば我ら今川が負けるはずがないのですから。
田鶴大ピンチです。このままでは瀬名が一時の気の迷いで間違いを起こしてしまいます。
関口家のために、なんとしても襲撃を止めなければなりません。
そしてさらに難題。襲撃を阻止するのと同時に、関口家が逃げ出そうと考えていたことも絶対に秘密にする必要があります。
つまり関口家を守るためには、「関口家の協力で徳川家の襲撃を退けることができた!関口家は我ら今川の味方である!」とまとめるのが一番理想的な形になります。
という風に考えてみると、
田鶴の「よくぞ打ち明けてくれました」は、巴にではなく、周りにいた今川勢の家臣たちに言っていたのではないかと思えてきます。
はー機転がすごい!
そういう目で見ると、兄鵜殿長照の「敵は討ち果てました。ご安心くだされ」も田鶴と同じように、関口家を守るための一言に聞こえます。
兄弟であなたたち…なんて…やさしい…
この兄弟たちはずっと…関口家をなんとか守りたいとその一心で動いてくれていた…?
言葉で説得するよりも、「今川の方が松平より強く、あなたたちは逃げることはできない、逃げずこのまま駿府で暮らすのが最善である」と現実をつきつけ、未練を絶たせ、正しい道に引き戻そうとしていた。
田鶴と長照が期待した通り、関口家が2人に乗っかって、味方のふるまいをしていれば。
あそこで「ありがとう」と一言言っていれば、関口家の未来が何か変わっていたかもしれません。
でも瀬名の想いは一時の気の迷いなんかではありませんでした。
彼女の気持ちは最初から元康のもとにあった。
今川を裏切り、彼の傍にいるという覚悟が決まっていた。
あの曇った悲痛な表情を見て、田鶴は初めて瀬名の本当の気持ち、そして自分は瀬名の心をわかってあげてはいなかったことに気づいたのではないでしょうか。
だから氏真に「気の迷いだから、関口家に温情を」と言っていた田鶴は、瀬名の決断が「気の迷い」などではないことを、きっとあそこにいる誰よりもわかっていたのだと思います。
それでも、失わせてしまった希望は、もう取り返しがつかないから、姉妹同然の瀬名を守るため、精一杯の嘘をついた。
はぁ…ずっと瀬名のこと考えてるじゃん…愛じゃん…いい子じゃん…
そしてその嘘を止めず、黙って聞いていた長照も、私はまた胸に来るんですよ!
だって妹が当主の判断に直接物申すんですよ!しかも当主があの氏真ですよ!絶対心配です!
私あの時、「田鶴、命惜しくはないんか…殺されてしまうかもしれんぞ!」と思いながら見てましたもん…
だけど、あのまま関口家が処罰されてしまった場合、田鶴はこの出来事を一生背負って生きていくことになります。
妹がどれだけ罪悪感に苦しむかと思うと、兄は止めることができなかったのでしょう。
もうみんな心優しすぎてしんどいじゃろ…そんな生き方
だれか氏真をぶん殴ってくれ…
まとめ
今回の記事は兄と話した内容が複雑で頭がこんがらがってしまい、前回よりもさらに文章力を借りてしまった…!ありがとう兄!
大河ドラマって1年もあるのに、一話一話こんなに綿密に作られているものなの…?
こんな少しの表情とか、やり取りとかにそんな深い愛が詰まっているなんて思わないじゃない…
田鶴…長輝…長生きしてくれ…
↓こちらはムロ秀吉が良すぎて良すぎて書きなぐった記事になります。
信長との関係、より強まる家康の尊さ…あふれて止まらない思いがぶつけましたので、ぜひお時間がありましたら読んでいただけると嬉しいです!
今回もまた魅力的なキャラクターが加わって、また目が離せなくなりました…!
特に本多正信が好き!
彼を新たに推しメンバーに加えて、また第6話を楽しみに一週間を過ごしていきます!
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