第12話のどうする家康「氏真回」
今までのムロ秀吉の話も、田鶴の話も、本多正信の話も大好きだったけれど、
それを超えて刺さりまくった回になりました…!
今まで氏真にヘイトを貯めていた分の反動が一気に私に襲い掛かってくる…
つらかったねぇ氏真…
これまでの悪行を決して許しはせんが、あたたかいスープとあたたかいふかふかお布団を用意したいねぇ…
そんな大好き第12話の大好き部分を兄が言語化してくれました!ありがとう兄!
はっきり言って、こんな話だったんだなぁ!と驚きましたー
何もわかってなかったみたい!雰囲気で生きるマン!しゃきーん!
氏真回どんな話だったかなぁみたいなときに備忘録として読んでいただけると、ぶわあああと思い出していただけるのではないかなと思います!
(※こちらの記事は2023年3月26日放送の記憶を頼りに書いています。間違っている箇所があるかもしれません。またニュアンスで書いているセリフやストーリーがあります。ご了承ください。)
そんなの気が狂うよね…氏真…
第一段階の絶望
氏真は偉大な王の息子として生まれ、そしてゆくゆくはその座につくものとして、力の限り努力をしてきました。
弱くて「自分には才がない」と悲しむ家康に優しい言葉をかけ、鍛錬を怠らず、勉学にも励むその姿は、まさしく将を志す者の理想であるといえるでしょう。
その氏真が積み上げてきたものが、家康との一騎打ちで一瞬で偽物になってしまいました。
負けたのが家康だったことが…悲しみの始まり…
家康はこれまで、織田信長の激しい愛情により、ぶっとばされ、沈められ、羽交い絞めにされ、多くの体と心の傷を背負ってきました。
そして、今川家の人質にされ、やっと平穏な日常を送ることができるようになります。
今川義元はそんな家康の処遇を聞いていたかもしれませんが、周りの家臣たちにわざわざ伝えていたとは思えません。
もしかしたら氏真にも詳しい話がいっていなかった可能性もあります。
強さを見せず、また戦闘訓練にあまり参加しようとしない家康は、武士としてなめられていたに違いありません。
そして特に氏真にとって最悪だったのが、家康がただ実力を隠していたというレベルを超えて、周りから「情けない男」と思われるぐらい穏やかに過ごしていたこと。
大好きなおままごとに精を出す家康は、みんなの目には女々しい、弱っちい男に映っていたと思います。
また家康本人もわざと大げさに負けて弱い振りをするなど道化を演じていたこともあり、今川家内の家康の武士としての評価は低いものになっていたでしょう。
家康が駿府の平和を愛したがゆえに生み出された、家康つえええ!じゃなくて氏真へぼ…の悲運…
本人のこれまで勝ち取ってきた自信や強さが粉々に打ち砕かれ、周りからの視線も嫌なものに変わってしまう悲劇…
今まで仲良く暮らしていた家臣たちに馬鹿にされ、
また兄弟のように育った家康にも馬鹿にされていたと思っても仕方ない状況が、彼の歯車を狂わせてしまいました。
く…家康が天下無敵激強岡田信長に鍛えられていた事実さえ周りに伝わっていたら、少しは今川家の家臣たちの評価も変わっていたかもしれないのに…
報連相って大事…
このときの「誰も自分のことを認めてくれない」絶望は、
今川義元の描く、氏真と家康が栄えさせる今川家の未来にヒビを入れるのに十分でした。
はぁつらつら…見てるだけの存在の私でさえ悲しい…
1話の瀬名争奪戦で勝てるはずの家康に負け、
義元の口から「(家康は)今まで手を抜いていた」と明かされるだけでも悲しかったのに、
12話の戦闘訓練のシーンで
氏真「つい力が入った…!すまんな」
家康「私には才がないのです。若君様には何一つ叶いませぬ」
氏真「そんなことを申すな。あきらめずコツコツやれば必ず上達するものぞ」
・・・・・・・
きついきつい!心がきつい!
家康が手を抜いていることにも気づかず、ご指導ご鞭撻しちゃってたなんて、恥ずかしいやら情けないやらでもう心の中ぐちゃぐちゃよ…
しかもその様子を今まで今川義元には「はぁまた元康手抜いて…氏真も喜んじゃってるじゃん…」って生暖かく見られてたってことでしょ!?
認めてほしい大好きパパにはバレてるわ、それを好きな人の前で晒されるわ…
これって氏真の脳内では…
家康はわざと負けていた
父上もそれを知っていた
家康を選んだ瀬名も当然、わかっていたのだろう
ならば関口家のものたちは?
他の家臣は?
ってなっちゃうのでは!!
これまでの家康との楽しかった日々が一転して、周りは演技で自分だけが何も知らずはしゃいでいた日々に感じてしまう…!
そりゃあ林の中を走るし、藁の棒みたいなやつも切るよ…
みんな寝静まっている夜明けの中でも叫んじゃうよ…
本当に二度といたすな!!!
第二段階の絶望
以前の「誰も自分のことを認めてくれない」絶望は「焦り」となって氏真を支配していきます。
そんな時にようやく来た実践的な戦い。
周りの評価が家康より劣っている今、
「ここで活躍できれば、皆の評価を勝ち取ることができる!」と意気込んでしまうのも仕方ありません。
リーダーは自分であると証明するためにも、どうしても戦いに行きたい氏真
しかし彼に突き付けられたのは「松平元康は大高城への兵糧入れ・自分は城で待機」という無慈悲な命でした。
そんなぁ…
そりゃ今川義元に詰め寄っちゃう!
また元康じゃん!なんで元康ばっかりって!
「そんなに私はそんなに頼りのうございますか!私は元康よりも信用できぬと!」って悲しい言葉をぶつけちゃう…
焦りや怒りや不安が氏真を支配しちゃう!
でもそこに帰ってきた言葉は
「そなたに将の才はない」
でした
絶望の極み…もう今生きているだけでえらい…
自分は周りに認められていないだけじゃなかった
一番認めてほしかった人からも認められていなかった
今川義元の息子であることを誇りに思い、その立場にふさわしい者であろうと必死に努力を重ねてきた結果がこれかと…
家康との楽しかった毎日、家臣たちの厚い信頼、築いていたと思っていた自信や強さ、すべてが彼の手から零れ落ち、父のような立派な将たらんという希望さえ、完膚なきまでに打ち砕かれました。
闇落ちするには十分すぎるほどの絶望です。
才を持っているくせにおままごとで遊び
義元に認められたのに今川家を裏切り
瀬名を勝ち取ったのに駿府に捨てていった
氏真が欲しいものを全部持っていて、そしてそのすべてを粗末に扱う元康
憎しみが限界突破してもしょうがないかも…
氏真と家康の一騎打ち
最終局面。
長期間なんとか戦い抜いてきた氏真も本丸まで攻め込まれ、ついに一人になってしまいました。
そこに現れる、憎き相手松平元康改め徳川家康。
悲劇の始まりだった一騎打ちが、ここで再び繰り広げられることになります。
氏真はこの時、家康の手で死ぬつもりだったのではないかと、私は思います。
敵の大将に討たれることは、意地を通して戦い抜いた、その最後にふさわしい華々しい幕引きです。
それなのに家康は、殺してさえくれませんでした。
屈辱にも峰打ちを見舞い、最後を美しく飾ることすら許してはくれませんでした。
やはり家康はずっと手を抜いていたのだ。
自分を馬鹿にしていたのだ。
そして父の見立て通り、家康には才があり、自分にはなかったのだ…
そう納得するしかない状況に立たされ、氏真は絶望のままに命を絶とうとします。
だから家康が必死に止めようとしたときも、これ以上まだ辱めようとするのかとさえ思っていたかもしれません。
本当に驚いたでしょう。
死んでほしくないと
今でも兄のように思っていると
自分からすべてを奪い、道化のふりをして嘲笑っていたはずの男が、涙ながらに体を張ってそう語るのですから
あえて必要のない一騎打ちに応じ、殺せたはずの戦いで峰打ちを選び、力の差を見せつけたいのならば、もう十分なはず
なお刀を持つ氏真に、自分の刀を捨てて飛びつく理由はありません。
一対一で、真正面から、命を賭けて放たれた家康の言葉は、誰のことも信用できず、誰からも必要とされていないと信じ切っていた氏真の心についに届いたのです。
実力もないのに兄貴を気取る滑稽な男を、家康は腹の中で笑っていたのだ。
家族のつもりではしゃいでいたのは、自分ばかりだったのだ。
そんな風にどす黒く染まっていた思い出は、家康の渾身の説得により、もとの美しい姿を取り戻しました。
誰にも認められない、という絶望から、氏真はついに解放されたのです。
しかし、そこまで。
もう一つの絶望は、家康にも救えません。
そう、それはもちろん、最も尊敬し、息子として誇りに思い、また次期当主として背中を追ってきた父から、将としての才を否定されたこと。
氏真の最も深い場所につけられた傷は、それをつけた今川義元本人にしか癒すことはできないのです。
しかしそれは叶うことがありません。
義元は死んでしまったから。
死者の評価を覆すことはできない
氏真が本当に救われる方法は、もうこの世に存在しない
はずだったのです。
氏真を救うたった一つの方法
彼を救うことは、今川義元本人しかできません。
そしてそれは同時に、氏真が救われる未来が存在しないということを意味します…
しかし実際には、そうはなりませんでした。
氏真の妻である糸が、
義元の最後の想いを、
氏真が深く傷ついた言葉の大切な続きを、
たったひとり、ひそかに受け継いでいたからです。
氏真に将の才がないのは本当です。
でもそれでも輝くものがあると義元は評価していました。
「余は知っておるぞ あれが夜明けから夜半まで武芸に学問に誰よりも励んでおることを あの気持ちを持ち続けるならば大丈夫じゃろ 己を鍛え上げることを惜しまぬ者はいずれ必ず天賦の才あるものを凌ぐ
きっと良い将になろう」
氏真が心の底から欲しかった義元の評価は、すでにもう手に入れていました。
わああおめでとうううう!
ちゃ…ちゃんと息子のことみてた!!!
頑張っている姿も!これから今川領を任せられる男になる未来も!
父として将として!氏真のことを認めてた…!!!
きっと!良い将に!なろうだって!!!
大好きなお父さんに!あんな将の極みみたいなスーパーカリスマリーダー男に!そんな言葉もらえるなんて!氏真だからだよ!
くぁあああよかったね…氏真…!
そして氏真を認めているのは、義元と家康だけではありません。
糸もずっと氏真を見て、ずっと認めていました。
彼女が義元から氏真の誉め言葉を聞くことができたのは、彼女の言葉が氏真に届いたのは、
氏真に愛してもらえなくても、置いて逃げろと言われても、常に努力を惜しまない氏真を敬い、理解し、愛して、最後までそばを離れずにいたからです。
愛されてるね…氏真…
氏真の将の才がないところ
私も将の才がないみたいで、何で氏真が将の才がないと判断されたのか分かりませんでした…なので兄に聞いてみました!
せっかく救われた氏真に鞭を打つ卑劣な所業ではありますが、どうして氏真の評価が低いかを理解することは、戦国時代の厳しさを知るのに有意義なはず…!と信じて!
ぜひ読んでいただけますと!
①瀬名を妻に欲しいとお願いしちゃうところ
これ!最初反発したんです!私!兄に!
氏真は北条と武田と同盟を組む話とか知らないから、「妻に欲しいなぁ」とお願いするぐらいはいいんじゃないかって。
さすがにそれで才ないポイント一点獲得はかわいそうだよーって。
そしたら
そのうえで「瀬名を娶りたい」と言ってきたら、え…夜明けから夜更けまでまで勉強して本当にその答え出てきた…?ってなっちゃう
と言われて
ぐうの音も出ませんでした
味方してあげられなくてごめん!氏真!
考えてみたら、瀬名の母巴は義元の妹…
瀬名と結婚しても今川家の外交は一ミリも広がりません…
はぁ…こんな一つのお願いだけで、力量が現れてしまうというのか…!
将の世界きびしっ!
そしてこの話でようやく!本当に今更気づいたんですけど、
瀬名と家康の結婚って外交目的もあったんですね!!!
欠片も知らなかった…
好き同士が結婚した方がいいもんね。よかったね…家康…瀬名…ハッピーウエディング!とか思ってたし、
「もう!まだ側室とるのはやいよ!もっと器を磨いてからにしようね!」という義元パパ流のお灸なのかと思ってた…
氏真が瀬名との結婚生活を夢見ていたあの時から、
すでに今川義元は今川家の未来を見据えて、
今川と家康の関係を、人質だけじゃなく、親戚という強いつながりに変えていた…
え…天才すぎる…!将すご…!これは氏真と私が悪いというよりは、将がえぐすぎる気さえしてくるほどにすごい
②部下の煽てを本気にしちゃうところ
家康がわざと負け、ほめられるとすぐ調子に乗ってしまうかわいい氏真。
とっても素直でほほえましいですが、どこに敵がいるかわからない戦国時代において、簡単な煽てにも気づくことができないのは、確かになめられてしまうかも…
邪心のない家康で家臣の振る舞いに気づかせたのは、義元なりの早めの対策だったのかもしれないなぁ
たしかにムロ秀吉がもし氏真に仕えていたら、あっさりと騙されて寝首をかかれてしまいそうな気がします…!
そう考えると、氏真の傍に家康をつけたくなる義元パパの気持ちもわかります。
心根がまっすぐで心優しい家康であれば、安心して氏真を任せることができますもんね!
やはり一家に一人はいてほしい家康…わかるよ…
きっと他にも気づいていないところ、ずっと見てきた今川義元だからわかるところがあるのだろうなぁ…
でもこれらはすべて、彼が命に直結する決断を経験していないことが関係しているように感じます。
義元のように戦に出て、肌で死を覚悟した経験があれば、少しでも血を流さないよう、外交の大切さがわかります。
また家康のように、幼いころから人質として、常に命の危険と隣り合わせで生きていたら、相手の行動の意図を深く考えるようになります。
氏真は力ある武将のもとに生まれ、大切に育てられ、未来のために勉強してきた。
常にしている鍛錬も、防具をしっかりとつけ、安全が確保されたうえでの戦いでした。
積み重ねてきた努力は、まだ教科書的な知識でしかない。
つまり!氏真は伸び代がえげつないということ!
戦場や敵方との会合、民の命に直結する政治など生の経験が増えれば、これまで蓄積したものが一気に花開き!カリスマあふれる将になれるはず!すごいぜ氏真!
まとめ
将の才がなくても、努力の才があった氏真。
「あきらめずコツコツやれば必ず上達するものぞ」というアドバイスは、氏真だからこそ出てくる素晴らしい言葉だったんだなぁ…
積み重なる悲運がなければ、今川義元の描いた、氏真と家康が手を取り合い、この世を納めていく未来が現実になっていたのかもしれません。
真面目で優しくて精進し続ける氏真…君の真の姿は光り輝いていたんだね…
これから本当に純粋な氏真として生きられる!
いっぱい糸さんと楽しい時間を過ごすんだよ…
そしてそして、氏真役を演じていた溝端淳平さん!の演技!
すごいよかった…手のひらの指紋がなくなるまで拍手したい
最初の
家臣がみな武田側につき、岡部元信に切腹を進言されるシーンで
やっと楽になれる→今川義元から「将の才はない」と言われたことを思い出す→このままでは死ねない。そんな事実認められない…せめて家康に一矢報いるまでは…!
みたいなこの気持ちの変化の流れを表情だけで演じ切るとか!天才かっ!
こんなに氏真のことを嫌いになれたのも、そして好きになれたのも彼のおかげ…
穏やか氏真がやさし健気かわいい糸さんと一緒にまた登場してくれますように!
家康もどんどん主君らしく育っていて、これが大河ドラマの真骨頂…!と感激しています。
あの臆病だった家康が…威圧感ばりばり信玄に立ち向かえる日が来るなんて…!
続きも見たいけど、終わっては欲しくない「どうする家康」!これからも楽しみに生きていきますー
↓前回の第11話の考察記事です!
最期に徳川軍に向かう田鶴は、家康に何を想うのか…
兄と私で真逆の解釈が生まれました!瀬名に出せなかった手紙についても書きましたので、もしお時間ありましたらー
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