ギラギラ…これまたAdoさんの歌声が良すぎる…
声も表現力もすごすぎて、彼女の真似をしようと頑張りますが、私がやると迫力のないカエルみたいな声になっちゃう…
すごいなーすごいなー
でも歌詞の意味をつかむことが中々できず…
なんかすごいことだけしかわからん!ちゃんと内容も分かったうえで楽しみたい!
ということで兄に聞いてみました。困ったときの兄頼み!(兄はMENSAとMETIQの会員です。すごい!)
するとしっかり音楽を聴いて考察してくれました!
聞いたらとっても大好きな考察だったので、頼んで文章にしてもらいました!
ぜひ読んでみてください。
もふもちた兄、いざ「ギラギラ」考察!
始めまして。もふもちたの兄です。
もふもちたのリクエストで、Adoさんの新曲「ギラギラ」の意味を解説していきます。
個人的に、考察系の記事は簡潔でわかりやすいものが好みです。この記事も簡潔でわかりやすい表現を心がけています。どうぞお付き合いください。
まず一言でいえば、
この歌は「醜形コンプレックスの少女が世界の醜さに救われる話」です。
具体的に歌詞を追って見ていきましょう。
1番
あーもう本当になんて素晴らしき世界
Ado ギラギラ 歌詞-歌ネット https://www.uta-net.com/song/297951/
んで今日もまた己の醜悪さに惑う
だのに人を好きって思う気持ちだけは
一丁前にあるから悶えてるんでしょう
Ugly 正直言って私の顔は
そう神様が左手で描いたみたい
必然 この世にあるラブソングはどれひとつ
絶対 私向けなんかじゃないでしょう
(※歌詞の部分に で線を引いています。)
この部分は、意味内容はシンプルながら、後半に伏線として機能するよう言葉が選ばれています。
「愛されたい欲求は強いのに、醜いせいで愛されることができない」という状況を「神様が左手で描いたみたい」というユニークな比喩を織り交ぜて表現しています。
この時点での「素晴らしき世界」は、文字通り「醜い自分とはかけ離れた世界」であり、少女は自分と「素晴らしき世界」の住人を比べて、強烈な孤独と疎外感、不公平感に苛まれています。
なお「Ugly」は醜いという意味の英単語です。
使い道のないくちづけ 憐みを恣(ほしいまま)に
Ado ギラギラ 歌詞-歌ネット https://www.uta-net.com/song/297951/
スパンコールの瘡蓋(かさぶた)で身を守る
愛されないくらいなんだ
醜いから愛されず、キスなんておとぎ話みたいな非現実。その代わり憐みだけはウンザリするほど貰える。というストレートな心情の描写です。
醜いせいで本当に愛されないのか、それとも、醜いという思い込みのせいで愛を素直に受け入れられないのか。個人的には後者だと思いますが、どちらの解釈を採るかは好み次第でしょう。
「スパンコールの瘡蓋」はやや捻った表現ですね。
瘡蓋(かさぶた)とは、傷を覆って隠すもの、それによって痛みを和らげるものです。
つまり、醜い身体を豪華なドレスで隠している、という描写だと思われます。
ギラギラ輝いて私は夜を呑み
Ado ギラギラ 歌詞-歌ネット https://www.uta-net.com/song/297951/
Rap Tap Tap Tap
今に見てろこのluv(ラヴ)
曲のタイトルでもある「ギラギラ」は、後に曲中で明かされる通り「Give love(愛をください)」をもじった言葉遊び。「luv」は「雑な愛」を表すスラングです。
「love」(愛)と「luv」(雑な愛)、「愛」を意味する単語をわざわざ使い分けるのは、明らかにその差が曲にとって重要だからです。もちろん、「love」はホンモノ、「luv」はマガイモノの象徴でしょう。
すなわち、
「醜さを隠して着飾り、愛(love)を求めて夜の街を彷徨っても、マガイモノの自分が掴めるのは、遊び慣れた男たちの適当な愛の言葉(luv)だけ」
という少女の状況を表していると考えられます。
目に染みるは1mgの花火
Ado ギラギラ 歌詞-歌ネット https://www.uta-net.com/song/297951/
Drag on Drag on
なんてファニー この世はビザール
この箇所は恐らく薬物の暗示です。深い絶望と退廃を印象付ける狙いでしょう。
「Drag」は「Drug」と(カタカナ英語では)同音で、1mgという単位は、日常では薬品などの成分量表示でしか目にしません。薬物の使用感は時にハジケるスパーク(火花)に例えられ、また瞳孔の拡散により光が目に染みるとも言われます。
ある種の薬物は、摂取するとまず躁状態(ファニー)になり、じき意識が混濁して世界が奇妙(ビザール)に見えてきます。
薬物によって歪んだ世界では、自分自身の歪み(=醜さ)も特別ではなくなることから、「素晴らしい世界」を壊してくれるものは、少女にとって救いである、と想像することができます。
2番
Unknown お釈迦様も存ぜぬうちに
Ado ギラギラ 歌詞-歌ネット https://www.uta-net.com/song/297951/
もう健やかに狂っていたみたい
それは世界の方かそれとも私の方ですか?
共生は端からムリでしょう
素直に、馴染めない世界への絶望と疎外感が再び描かれています。
誰もが欲しがるものを欲しがっているだけ、醜くて手に入らないからより強く焦がれているだけなのに、狂っていると言われてしまう世界。
実際、狂っているのは彼女の方かもしれません。「自分は醜い」という彼女の信念が、ただの強迫観念なのか、それとも冷静な分析なのかは証明されていません。
しかし彼女にとっては、おかしいのが世界でも自分でも、結局は同じことです。自分だけが世界と共存できず苦しんでいる、という事実は変わらないからです。
彼女が救われる方法は、どこにもないように思えます。
マガイモノこそかなしけれ 無我夢中疾る疾る
Ado ギラギラ 歌詞-歌ネット https://www.uta-net.com/song/297951/
強い酸性雨が洗い流す前に
蛍光色の痣抱いて
「マガイモノ」とは、化粧やファッションで美しいフリをした少女自身のこと。「強い酸性雨」は、そんな少女の鎧(ドレス)を溶かそうとする男たちの欲望のことを指し、更に「蛍光色の痣」は、ドレスの下に隠した自分自身の、目を引くほどの醜さを嘲る比喩だと考えられます。
つまり彼女は、
素顔の自分は誰からも愛されない、という強迫観念の下で、それでも愛(love)を探して夜の街を彷徨っては、欲に塗れた愛(luv)を向けられて逃げる。
という虚しい営みを繰り返しているのでしょう。
メラメラ火を噴いて私は夜の狼
Ado ギラギラ 歌詞-歌ネット https://www.uta-net.com/song/297951/
Rap Tap Tap Tap
そこで見てろこの乱舞
強くおなり あなたなりの武装(メイクアップ)で
Flap up Flap up
不意に不安に
「ギラギラ」が「give love」の言葉遊びなら、
「メラメラ」は「make love」の言葉遊びで間違いないでしょう。
「make love」は夜の営みの婉曲表現です。
また「夜の狼」は、歌い方からも「夜の神」とのダブルミーニングだと思われます。
「Flap up」は「羽ばたく」という意味の英語表現で、上昇のイメージ。
つまり、総合すると、
ホンモノ(love)を求めて藻掻くうちに、身体を餌に男を手玉に取る術を覚え、夜の街で光を浴びたけれど、集まるのはマガイモノ(luv)ばかり。男たちは化粧で武装した私に傅いているだけだ、という考えを断ち切れず、しばしば発作的に「本当の私が愛されることはない」という不安に襲われてしまう。
という少女の状況を表すものと考えられます。
孤独は燃料(ガソリン) 卑屈な町を行く
Ado ギラギラ 歌詞-歌ネット https://www.uta-net.com/song/297951/
目を閉じて もういいかい もういいかい
もしも神様が左利きならどんなに幸せか知れない
「目をとじて もういいかい」というのは、かくれんぼの呼びかけの台詞です。
自分を愛してくれる人なんてどこにもいない、と確信しながら、それでも孤独なままでいることが苦しすぎて、あてもなく「もういいかい」と呼びかけ続ける虚しさ、癒えない絶望感が巧みに描写されています。
なお「神様が左利きならいいのに」とは、
1番Aメロの「私の顔は神様が左手で描いたみたい」という表現を前提にした、
「美しく生まれついてさえいればどんなに幸せだっただろう」という嘆きです。
ギラ ギラギラ ギラ ギラギラ
Ado ギラギラ 歌詞-歌ネット https://www.uta-net.com/song/297951/
Give Love 花は満ちて(ギラギラ)
ありのまんまじゃいられない 誰も彼も
なんて素晴らしき世界だ!
ギラついてこう
この最後のサビを解釈するには、多少の飛躍が必要です
誰も彼もありのままじゃいられない
なんて素晴らしい世界だ
という歌詞に、私は例えば次のようなストーリーを想像します。
醜いから愛されない、本当の自分を隠して雑な愛を渡り歩くことしかできない、という思い込みに囚われた少女。
彼女には、生まれつき美しく、愛を簡単に手に入れてしまう友人がいます。
彼女はその友人に、強い嫉妬と憧れを抱いていました。
ある日、少女は偶然にも、その友人の裏の顔、隠された醜さを目にします。
それは、自分だったら死にたくなるほどの、反吐が出るほどの耐え難い醜さ。
しかし、その友人は、次の日には、やはり完璧な姿で少女に笑いかけるのです。
そして少女は気付きます。
彼女も、いえ、誰もが、神様に左手で描かれた醜い人間なのだと。
私が今そうしているように、必死に美しいフリをしているだけのマガイモノなのだと。
同時に、彼女の心には火が灯りました。
ならば自分は負けない。
マガイモノばかりのフェアな世界なら、あとは強く望んだ者が勝つはずだ
「マガイモノの自分には、マガイモノの愛(luv)しか手に入らない」と絶望していた彼女は、「誰も彼もありのままじゃいられない」という気付き、言い換えれば「誰も彼もマガイモノなのだ」という気付きによって救われました。
ラスサビの「素晴らしい世界」は、1番で歌われた「素晴らしい世界」(=醜い自分とはかけ離れた世界)とは意味が反転している、と考えるべきでしょう。
「誰も彼もがマガイモノ」の世界では、少女の「どうせ私はホンモノじゃない」という絶望は意味を失い、loveとluvの区別は消え、ただ「誰よりも愛(love/luv)を捧げられてきた」という結果だけが真実になります。
すなわち、
ラスサビにおける「素晴らしい世界だ!」という言葉は、彼女の世界をひっくり返した気付きへの感動の叫びであり、
「ギラついていこう」という言葉は、「世界はクソだけど、平等にクソだ。誰かが掴んだ幸せなら、必ず私(/貴方)にも掴める。貪欲に生きよう」
というメッセージなのです。
おわり
いかがでしたでしょうか!兄の考察!
私は好きでしたー…
(↓兄が東野圭吾さん著作のガリレオ「容疑者xの献身」を考察してくれた記事もあります!
お時間ございましたら読んでいただけますと!)
気に入ってくれたらもちろんうれしいですし、「その部分は自分はこう思う!」というのがあったらそれはとっても楽しくて素晴らしいなと思います。
最後に素晴らしい曲を作ってくださった、Ado様、てにをは様、Naoki Itai様、沼田ゾンビ様、ORIHARA様ありがとうございます!
これからもいっぱい聞かせていただきます!
コメント
コメント一覧 (2件)
最初、この歌に遭遇したのはAdoさんのPVではなく、REO = 五条院凌さんの丁寧な歌詞字幕付きのピアノ動画でした。だから最初は歌として聴いたのではなく、卓越したピアノ演奏の字幕としてだけ出遭ったのですが、余りにも魅力的だったので直ちにハマり、その動画と後で見付けたAdoさん自身のPVを、合わせて48回も聴きました。このタイプの曲にここまでハマったのは私にとって全く初めての経験でした。
この歌の不思議な歌詞、明晰な もふもちたさんのお兄さん の解説が他の誰の解説より腑に落ちました。
この素晴らしい解説に出遭えて良かったです。この解説を作者の てにをは氏にも見せてみたいですねぇ。
もふもちたさんのお兄さんに丁寧な解説をありがとう御座いました・・・と是非お伝えください。
うつぎれい より。
わーい!コメントありがとうございます!!!
今までスパムしか来なかったので、確認が遅くなってしまいました・・・申し訳ありません・・・
とても魅力のある曲ですよね!
曲の雰囲気も、歌詞も、Adoさんの歌声も本当に素晴らしくて、何度も繰り返し聴きたくなる気持ちがわかります。
私もこの曲大好きで、兄の解説でより好きになったので、うつぎれいさんにも同じように喜んでいただけて嬉しいです!兄も喜んでいました!
もし「この曲の解説を兄のでみてみたいな」というものがありましたら、兄に頼んでみますので、ぜひ教えてください。(ご期待に沿えなかったら、兄の力が及ばなかったんだなと思っていただけますと・・・!)
もふもちたより。