容疑者xの献身をやっと読みました。
読書家の兄から、今まで読んだ中で上位に入るからぜひ読んでほしいと言われていた作品。
映画は見ていたのですが、小説はなかなか手が出ず…
ずっと寝かせていましたが、
最近映画「沈黙のパレード」が始まるプロモーションで、予告が流れたり、Tverで過去作品が見れたりと、さまざまなガリレオの誘惑にやられてしまい、ようやく手に取ることができました。
結果…読んでよかった…心から
こんなに面白いのかと
読み終わった後は兄と一緒にダンスを踊りました!
しかしわからないところもありまして…
さっそく兄と話してみました!
すると生まれたひとつの大好き解釈…
刺さる人にささったらうれしいな!ということで、ご紹介させていただければと思います!
個人的大好き解釈(兄の考察)
石神さんは天才ゆえに人の気持ちがわかりません。そして天才ゆえに、自分を肯定することができません。
誰も聞いていない授業をするために、職場と自宅を往復するだけの毎日。
自分を客観視できる知性のせいで、無価値な人生だと悟らざるを得ないのです。アカデミアに残り、才能を遺憾なく発揮する湯川先生とは、何もかも対照的といえます。
しかし世を見れば、無意味な人生を、それなりに楽しそうに、無軌道に生きている人が大勢います。
生徒たちがそうですし、ホームレスもそうかもしれません。
なぜ、自分より遥かに劣る能力しかない者が、幸せに生きることができるのか。
これは大変難しい問題です。
どうやら、自分には何かが欠けているらしい、という感覚を、劣等感という形で、石神さんは無意識に持ち続けてきたのではないでしょうか。
石神さんが、花岡親子を一目見ただけで、自殺を思い留まるほどの衝撃を受けたのは、
おそらく二人の姿を通して、自分に欠けているものが何なのか、その答えの一端に触れたような気がしたからでしょう。
死を選びたくなるほど無価値な自分の前に、突然自分とは真逆の人間が現れたら、神聖なほど価値がある存在に見えても不思議ではありません。
石神さんは二人と出会うことで、生きる意欲を取り戻しましたが、自分の価値を認められるようになったわけではありません。というよりも、天才なので、自分が取るに足らない人間であると、正しく客観的に認識しています。客観性が崩壊しているのは、花岡親子に対してだけです。
そんな状態で、花岡親子が絶望的な窮地に追い込まれればどうなるか。
石神さんは、現実の損得を数学の問題のように考えることができてしまいます。
無限の価値がある花岡親子を、無価値な自分と、無価値なホームレスの犠牲で救えるならば、考えるまでもなく助けるでしょう。
それは、100―(1+1)>0であることと同じくらい自明なことです。
では、花岡親子の目には、石神さんはどう映ったでしょうか?
確かに、石神さんの献身により、真実は隠され、花岡親子は幸せに暮らせるようになりました。
しかも、今更真実を暴いたところで、石神さんは既に罪を犯しているので、何の解決にもなりません。
単に花岡親子も一緒に罪に問われるだけです。
つまり、ごく単純な算数の問題で、花岡親子は幸せに暮らすしかありません。
幸せな生活を捨てて得られるものが、既に何もないからです。
しかし、花岡親子は、石神さんのような天才ではありません。
現実を算数の問題のように考えることはできません。
自分たちに特別な価値があるとも考えていませんし、そもそも人を犠牲にすることなんて発想もできません。
そして、石神さんに価値がないとも、考えていません。
石神さんの献身は、残酷にも、花岡親子に届いていました。
少なくとも、石神さんに罪をかぶってもらって、何もなかったかのように幸せに暮らせるほど、石神さんは親子にとって価値のない人間ではなくなっていたのです。
最後のシーンで、石神さんは、なぜ花岡靖子が自分の所にきたのか理解できず、絶叫して泣き崩れます。
人を愛することを知ったばかりの石神さんには、他人の気持ちも、自分の価値もわからないからです。
自分が犠牲になって悲しむ人がいるなんて、想像もしていないし、自分が誰かにとって大事な人間になるなんて、全く計算外のことだからです。
靖子さんは最後に
「石神さんと一緒に罰を受けます。あたしに出来ることはそれだけです。あなたのために出来ることはそれだけです。ごめんなさい。ごめんなさい」
東野圭吾 「容疑者xの献身」(2005年) 351ページ
と言いました。
何の利益もないのに、石神さんと一緒に服役することを選びました。
それは、「あなたを犠牲にして、自分たちだけが幸せになることはできない」「あなたを犠牲にする悲しみに、私たちは耐えられない」と石神さんに伝えるためだけの、天才ではない彼女の精一杯の献身だったでしょう。
終わりに
最初は私が書いていたのですが、力量不足に心が折れまして、兄に書いてもらいました…!
なんとまあ素晴らしいものを…あなた…
しゃべったときも泣いたのに、兄が書いてくれた文章を読んでまた泣いてしまいました。いい作品だ…
私は私のあきらめの良さにこんなに感謝したことはありません。
すぐ投げ出してくれてありがとう私…
そして突然書かされた兄…ごめんね…素晴らしいものを読ませてくれてありがとうね…
容疑者xの献身は石神さんだけでなく、花岡さんにもかかっているというのがすごい…
もう東野圭吾さんに申し訳ない。気づかないまま感動していた。
東野圭吾さんってすごいと思ってたけどもっとすごいんだなぁ。もっと本読みたいなぁ。
絶対に沈黙のパレードを読むし、映画も観に行こうと心に決めた今日でした。
ここまで読んでいただいてありがとうございました!
そして兄も深夜2時まで書いてくれてありがとうございました…
↓兄がAdoさんの「ギラギラ」を考察してくれた記事もあります!
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